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天官賜福(アニメ)第一期 考察メモ③「半月関編・上」

第6話「半月迷踪」~第8話「风起古国」

(日本版:「あやかしの砂漠へ」~「暗雲漂う故国」)

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(目次)

・第6話「半月迷踪(あやかしの砂漠へ)」

・半月関(はんげつかん)・半月国(はんげつこく):北西にある砂漠地帯にある緑地。

※モデルはおそらく甘粛省北西部の敦煌市か。かつてシルクロードの分岐点として栄えたオアシス都市であり、砂漠の中に月牙泉と呼ばれる三日月型の池がある。

紀元前からこの地域を支配していたのは月氏(げっし)」という遊牧民族だったとか。

敦煌市 - Wikipedia

・空殻(あきがら):人間に化けることができない妖魔鬼怪が外側だけ人間に似せて作った中身のない人形。謝憐が水を飲ませた時の音が人の喉を通った音ではなく反響音が聞こえたため正体を見破った。

老人が腰に身に着けているのは鉄の仙剣と八卦(はっけ)と呼ばれる道教の占い道具。ただの老人ではなく道士に扮していた。呪符が貼られた扉をくぐっていることからこの空殻を作った者はかなり強いと推察できる。

・風師(フォンシー):風を司る神。社交的で気前が良い。功徳はお金の役割もあるためばら撒いている。

・半月妖道(はんげつようどう):半月関(半月国)の国師のこと。国師とは、国主の師のことで、王への助言や王族の教育などを行う高僧。

・南風と扶揺再び:フォ…じゃなかった、南風と扶揺は通霊陣で半月国のことを聞いていた謝憐のことを聞きつけて、また同伴を志願してきた。ヤサシイナァ~

・謝「彼を知っているのか?」扶揺「知りませんね」直感的な同担拒否か? 殿下「やけに喧嘩腰だなぁ(ド天然)」神官三十五人の挑戦の時と、それ以前と、この従者二人と三郎少年は少なからぬ縁がある(特に扶揺と三郎)。……が、3名とも殿下に素性を隠しているため「人違い」「勘違い」「見覚えがある気がする」と、水面下での探り合いを続けることになる。

二人の前で謝憐のことを「哥哥(兄さん)」と親しげに呼び、更に扶揺に箒を投げて煽っている。三郎は二人の正体に気づいている模様。三郎の素性を口早に問いただす南風はお母さんか。

・「”こんなところ”に住んでいるんですか」

慕情は、仙楽国を救うために下界へ降りた太子殿下のその後のことをあまり知らないため、仙楽太子だった頃と暮らしぶりの落差を感じている。「こんなところ」と言っているが、慕情は元々は貧しい家の生まれで、こういう場所に住んでいた。

対して、「いつももこんなところに住んでいるよ(吹替:もう慣れっこだ)」という太子殿下の言葉に陣を書く手を少し止める南風。原作通りの丁寧な描写、非常に助かる。風信は、仙楽国滅亡後の国王や王妃、そして太子殿下を知っている。読了後に見ると二人の対比が非常にえぐ…趣深いシーン。

謝憐と三郎が一緒に寝たことに関しては深く追求されない。もっとすべきだろ。

・縮地千里(しゅくちせんり)の方陣:土地と土地を繋げて移動距離を短くする術。移動距離に応じて使用する法力が増えるため多用はできない。

・地師(ディーシー):地を司る神のこと。確かに、縮地千里が無限に使えたら地師は不要になる。

北極星に向かって真っ直ぐ:つまり真北へ向かって移動することになる。敢えて細かいことをいうと、古代中国の天文学(星官)でポラリス北極星)が認知されていたかどうかはちょっと怪しい。当時はこぐま座β星が天の北極に最も近かったため、これが「帝」と呼ばれていたようだ。

北極星 - Wikipedia 星官 - Wikipedia

・「西域の夜空は中原より明るい」:三郎が言っているとおり、中国西部の砂漠地帯は緯度が高いため、時期によっては白夜のように夜でも少し明るいのだろう。北半球ではっきりした白夜が起きるのは6月下旬の夏至前後。そういえば5話で中元節(旧暦7月15日)を迎えていたので時期的には今の暦でざっくりいうと8月上旬~中旬くらい?

・暑そうな三郎:鬼である三郎は絶といえど光が苦手なのかしばしば太陽を嫌う描写がある。この砂漠の暑さの表現が、原作では「巨大な蒸籠(せいろ)のなかに深く入っていくよう」とあり、日本人からはまず出てこない表現でめっちゃ好き。これだから海外文学はやめられねえ。神官二人はケロッとしている。

・絶境鬼王(ぜっきょうきおう):絶境鬼王(等級が絶の鬼の王)のこと。血雨探花と黒水沈舟。

・現形水(げんけいすい):太子殿下達がナチュラルに間接キスをキメた後、扶揺が出した秘薬。普通の人間が飲んでも何の問題もないが、人ではないものがこの水を飲むと本当の姿が明らかになる。つまり扶揺も飲めば……

・紅鏡(こうきょう・ホンジン):剣を鞘から抜くと、その名のとおり剣身が赤くなり、人ではない者の真の姿が映しだされる。現形水は三郎に効かなかったが、この刀については、法力が強かろうが、凶でも絶でも関係なく効果がある。アニメでは「質に入れたはず」としか説明しないが、これは謝憐の一度目の飛昇の際に帝君(君吾)から贈られた珍しい剣で、その後天界から貶謫された謝憐が生活に困り風信に質に入れさせたもの。粉々に折れてしまうし、可哀想な経歴がどこか魔道祖師の魏無羨の仙剣「随便」を彷彿とさせる剣。折れた紅鏡は修復され、とある場面で再登場する。

・会話のテンポ悪くね?:全体的に微妙にセリフの間が空いてしまっているのは、プレスコ方式(声を先に録音して、それに合わせてアニメを後から付ける方法)で制作されているため。日本語吹替だから、というわけではなく、なんなら中国語のほうがセリフが短いのでもっと間があるかも。海外アニメではプレスコ方式のほうが多いためセリフの間をつなげるアニメーションテクが必要になってくる。日本では作画に合わせて声優が工夫して演技するアフレコ方式が一般的。

・若邪、頼れるものを掴め!:愛すべき白綾。

 

・第7話「蝎尾蛇影(忍び寄る影)」

・妖道双師(ようどうそうし)半月国の半月国師と、永安国の芳心(ほうしん・ファンシン)国師のこと。数ある国師のなかでも妖術を使ったとされる二名。太子殿下のいうとおり、二人が活躍した時期は100年以上違う。やけに詳しいですねぇ…

・千斤墜(せんきんつい):中国の武功の一種で、千斤の重さがあるかのように重くなる術。一斤は約600gらしいので、千斤は約600kg。この術を使えば風に吹き飛ばされずに済んだはずだが、領域外のため法力が弱く使えなかったとのこと。

・「(洞窟を掘るのに)時には爆薬も使う」:火薬あるの!?と思ったら唐代には既に火薬があった可能性があるんですね。

火薬 - Wikipedia

・天生(ティエンション):通りすがりの旅の商人の一員の少年。

・阿昭(アーチャオ):小説版では阿昭(アージャオ)と読む。商隊の水先案内人。色白。おや、CVが誰かと同じだが……?

・三郎大百科:ホワペディアとでも言うべきか。名探偵謝憐と三郎大百科はビリビリでもコメントが多い。

・校尉(こうい):将軍の碑にかかれていた人物の実際の位。部隊長。古代中国における将軍は、皇帝から官位を任命された役職のことで、語源も中国にある。

校尉 - Wikipedia

・蝎尾蛇に刺された謝憐:謝憐にあまり痛そうな様子はない。痛覚がないわけではないが、過去に色々あって痛みに慣れまくっている。あと、法力は制限されているが神官なので死なない。
この時の三郎の表情については、自分が側にいながら殿下を負傷させてしまったことに対する後悔や自責、苦痛を受けすぎて顔色すら変えない殿下に対する悲しみが入り混じっている様に見える。

・扶揺を商人の護衛に置いて半月国へ:謝憐は風…南風を手元に残しがちじゃないですか?

・善月草(ぜんげつそう):半月国でしか育たないとされる薬草。

 

・第8話「风起古国(暗雲漂う故国)」

・傷の手当てをする三郎:善月草を見つけ、手当をする三郎。太子殿下を守れなかったため、罰として謝憐に触れることを禁じている?

・土埋面(どまいめん):*土の中にいる* この世界には自分のことを人間だと思っている妖魔鬼怪がいる、ということですね。

・刻磨(コーモー):半月国の将軍。持っているのは狼牙棒(ろうがぼう・ランヤーパン)と呼ばれる中国の戦国時代後期と宋代において用いられた打撃武器。

・半月国の言葉:標準語(マンダリン)で話す謝憐達に対し、訛りの強い中国語で表現されているようだ。どこの訛りっぽいのかはちょっと分からん…。

・罪人坑(ざいにんこう):文字通り罪人を落とすために作られた監獄の坑(あな)。下は蛇蝎と猛獣、放り込まれた半月国の戦士(鬼)がいる。

・柱に縛られた人影

そして、それを見つめる阿昭。意味ありげだが阿昭は真っ先に罪人坑に落ちてしまう。

三郎も自主的に落ちていくしもうめちゃくちゃだよ!

・天官の学び舎(非遗小课堂)①:唐突に始まった中国の文化の紹介コーナー。日本版では文字が消されて横書きの一筆箋のようになっている(ちょっと欲しい)が、オリジナル版では「非遗小课堂」と題されている。非遗=無形文化財、小课堂=小さな教室。

※なぜかオリジナル版と日本版で紹介する工芸品の順番が異なる。尺の都合?

【オリジナル版】

新粉細工(8話)→澄城刺繍(9話)→福州油紙傘(10話)

【日本版】

福州油紙傘(8話)→澄城刺繍(9話)→新粉細工(10話)

職人さんの名前は严磊(嚴磊:イエン・レイ)さん。作製されているコラボ傘、泣くほど欲しい……。

福州は福建省省都で、歴史上、閩越、閩、南宋、南明、中華共和国の5つの政権で首都とされており、『五朝古都』と称されている。歴史のある町なんですね。