下郡中のログ庫

下郡(しもごおり)と中(あたる)のログ保管庫

2020-01-01から1年間の記事一覧

◆中庭のふたり/ハピコニ

コンスタンツェは貴族令嬢であるから、今日という日をそれなりに楽しみにしていたのである。けれどハピがくるりと背を向けた瞬間、その手を取ってついてゆく以外の選択肢は頭の中から消えてしまった。どうして、と疑問に思う余地もなく。 あっちは楽しそうじ…

◆ゾルタンの剣/フェリ+先生

先生は困惑していた。生まれてこの方傭兵以外の生き方を知らない身で、ひょんなことから士官学校の教師になったはいいものの、当たり前だが苦労の連続である。授業の仕方から戦闘の指揮、生徒のメンタルケア辺りまではまあ理解できるものの、どうして落とし…

◆日常/バルタザール

とある書物によれば、人が想像し得る範囲の出来事は実際に起こり得るのだそうだ。 随分と昔、まだ己が貴族の跡取りとして教育を施されていた頃の話だ。そんな馬鹿な話があるか、と読んだ当時のバルタザールは思ったものだが、いざこれまでの人生を振り返って…

◆さよならも言わずに/アネット(FEH)

アネットが親友のメルセデスと共にこの世界へ呼ばれた時、戸惑う二人に召喚師と名 乗る人物は「ディミトリもいるよ」と安心させるように言った。だからなんだ、と いま思い返せば思わなくもない。ディミトリが此処にいることと、 親友と二人で買い出 しに行…

◆シルヴァンがお菓子を手作りするタイプのシルフェリ(お題)

このところ、幼馴染の弟分が妙にやさしい。いや、やさしいと言うのは少し語弊があるかもしれない。相変わらず素行は尖っているし、口は悪いし(なんせ人の顔を見ればやれ軽薄が服を着ているだのやれ不真面目が歩いているだのと随分な言い草なのだ)、手合わ…

◆女神の見えざる歯車/ベレディミ

命を救われた恩人が、士官学校で教鞭をとることになった。運よく俺の学級を受け持つと知った時には喜んだが、後々、先生が自ら青獅子学級を「選んで」くれたと知ったときは猶更嬉しかった。先生は素晴らしい人だ。俺が全力で打ち込んでも、それを容易く受け…

◆友達/ヒルマリ

マリアンヌは己を、善い人間だと思っていない。 見た昔のように、周囲に不幸をまき散らすとは既に考えていないが、かといって、他者に幸福を与えられるとも思えない。だって……ちらりと横目に見る、ヒルダの明るい桃色の髪は、夕陽に透けてキラキラと輝いてい…

◆軍務卿と紋章学者

カスパルの枕を抱え込んで、すやすやと寝息を立てている幼馴染を見ながら、カスパルは欠伸をひとつ零した。 帝国の軍務卿としては、屋敷に(一応は、と注釈はつくが)客人として招いている以上、貴族籍を捨てたとはいえ皇帝陛下が直接研究費を出資している紋…

◆青い光/メルセデス

ガルグ=マクで出会った級友はみんな、私より年下だった。いちばん離れている子では7つ、いちばん近い子でも私より2つ下。親友のアンをはじめ、もう少年少女と呼ぶには相応しくなくて、けれどまだ大人にはなりきれていなくて。彼女たちを見る度に、私の心は…

◆春を待つ/ギュスタヴ

凍てついた針葉樹林、万年雪をたたえる山脈、身を切るような冷たい風。北の大地に生きるということは、これらと共に生きるということでもある。人が平穏に暮らすには決して向いているとは言えないこの地で、それでもファーガスの人々がこれまで営みを紡いで…

◆触れる/双璧

君に触れても、良いだろうか。 許可を求めるフェルディナントの瞳には確かな熱が籠っていて、生憎、その言葉に込められた真意を汲み取れない程ヒューベルトは鈍くは無かった。拒むつもりでいた。けれど、拒む理由が見つからなかった。断ることが出来ると思っ…

◆抜け道/王と辺境伯

「なあシルヴァン。この部屋にはもう一つ扉があることを知っているか」「いいえ? でも、まああるでしょうね」 なにせここは王の執務室だ。ディミトリだけではない、歴代の王が使用したこの部屋は、揃えられた調度品から窓枠の意匠に至るまで、すべてが最高…

◆夢じゃない/ハンマヌ

ただいまあ、と間延びした声が玄関の方からして、次いで、ドタバタガタガサゴソと騒がしい音が響いた。やがて、寝室の扉が開くと同時に、殆ど倒れこむようにして女が部屋に転がり込んできた。うう、とかぐう、とか、言葉にならない呻き声を上げている。ハン…

フェリクス=ユーゴ=フラルダリウスまとめ(上)

同じスクショばかり撮ってしまうため「それはもう撮ったぞ」という記録のためにやってるところがある

◆愛別離苦/王と盾

強い花の香りに、フェリクスは思わず顔を顰めた。もう大樹の節も半ばである。窓から差し込む春の陽気は麗らかで、色とりどりの花は新しい年を寿ぐに相応しい。ここには穏やかな時間が流れているのだと、部屋に一歩足を踏み入れた瞬間、理解してしまった。そ…

◆MVP/青獅子

「今回のMVPを発表する」 鷲獅子戦を終え、惜しくも敗れた俺の耳に、隣の学級の担任がそう宣言するのが聞こえた。「えむぶいぴーって何だ?」 俺は隣のドゥドゥーに小声で聞いた。ドゥドゥーは、「分かりません……」 と困ったような顔で首を横に振った。 その…

◆大河に沈む/フェル+ロレ

「想いを寄せる相手がいるのだ」 フェルディナント君が凪いだ声でそう言った。欄干に先れかかり、大河を眺めるその横顔は、風に煽られた長い髪が遮っていて表情が分からない。 我々は共同戦線を張るが、味方同士という訳ではない。互いに、敵の敵であるとい…

◆残酷/シルヴァン

群衆は幸福を追求しながら、物語には常に悲劇を求めている。寓話はいつだって数奇な運命を愛しているし、叙事詩は凄惨さをまるで香辛料の如く潜ませることを好む。だとしても――とシルヴァンは笑った。もしこれが歌劇の一幕であったなら、この脚本を描いた劇…

◆ぼくのめがみさま/イグナーツ

恋をしている。その人のことを考えると胸が高鳴って、その人が視界に入るとそれだけで世界が煌めいて見えて、その人が呼ぶボクの名前は世界で最もうつくしい響きに聴こえて堪らなくなる、そんな恋をしている。 恋をしている。きらきらと輝いて、ふわふわと甘…

風花おえかきログ(2)

2020.8~

◆毒/ディフェ

茶会に誘われる、という経験は腐るほどしてきたが(主に士官学校時代の担任から)、ディミトリに誘われるのはそういえば初めてだった。 供された紅茶を一口飲み、用意された茶菓子に手を伸ばす。ほろりと口の中で溶けて、香ばしい胡桃の香りがいっぱいに広がっ…

FE風花雪月発売1周年おめでとうございます(イラスト/SS)

絵と、絵を見て即興で書いてくれたおはなし

◆闇に潜むは/双璧

帝都でまことしやかに囁かれている噂の一つに、こんなものがある。 ――宮内卿は吸血鬼だ。かの御仁は夜な夜な帝都の闇に紛れては、人の生き血を啜っているのだとか。いやいや、若い女を浚ってはその処女血を飲むのだとか。はたまた、血を吸った相手を己の眷属…

風花プレイログ

ゲーム日記です

栞/英雄の遺産+アッシュ

風花おえかきログ(1)

らくがきとか放り投げるところ 2020.6~2020.7

◆霧中/フェリクス

乳白色の霧が身体に纏わり付いて鬱陶しい。魔導で生み出されているというそれは確かに霧らしく水分から成っているようだが、ねっとりと絡みついてくるように感じられて、その不快さにフェリクスは本日何度目か分からない舌打ちをした。 霧に阻まれて、燦々と…