下郡中のログ庫

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天官賜福(アニメ)第一期 考察メモ①「鬼花婿編」

第1話「太子新娘」・第2話「山锁明光」・第3話「旧恨红颜」

(日本版:「太子の嫁入り」、「隠された明光廟」、「女将軍の執着」)

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第二期放送おめでとうございます。中国本土では色々あるみたいですが強く生きて…

日本でも第二期放送に先駆けて第一期の再放送や第二期の字幕版の放送も始まりました。感想含め書きたいことは多少あるのですが結局のところ「原作読んでくれ」の一言に尽きる。とは思いつつもアニメオリジナルの描写などで調べるうちにちょっとした自由研究になってしまったのでやっぱ書きたい!!ので、備忘録を残そうかと思います。

原作未読の、アニメ初見の方向けを想定して、日本語セリフだけだと分かりづらい用語についても書き出ししていこうと思います。このログ庫の相方(下郡)も読んでね。

因みに自分は原作を英語版と繁体字版で読み繋いで読了済みです。ふわっとネタバレしてたらごめんなさい。

(目次)

・第一話「太子新娘(太子の嫁入り)」

・とある集落の花嫁行列のシーンから。中国の伝統的な花嫁衣装は赤い。花轎(かきょう)と呼ばれる花嫁を乗せた輿に花嫁を載せ、花嫁は頭に蓋頭(吹替では「面紗(めんしゃ)」)というヴェールを被り新婚夫婦の新居へ運ばれる。

なんで折り鶴なんだよ!原作にないアレンジ。折り鶴は江戸時代の文献にて初めて確認されており、当然古代中国にはないし、折り鶴にはこのような呪術的な要素はない。

折鶴 - Wikipedia

・OP・ED:吹替版はいつもの(?)オリジナルMADのようなものに差し替えられている。また、中国版スタッフのクレジットがほぼカットされている。

・1話は約35分:オリジナル版(中国)の放送はテレビではなくビリビリ動画の独占配信で、話ごとに放送時間が異なるうえ、日本の地上波放送のように途中でCMを挟むこともない(アバンやED前にCMがある)。吹替版では日本の放送枠に合わせた調整がなされており、前回の振り返りが違ったりタイトルカットが省略されていたりする。

・神官達の服装について(たまに左前の衣類の人がいる件について)

原作では細かい描写がなかったためアニメオリジナルかと思われるが、実に様々な服装をしている。多民族国家である文化、また、神官達の元々の身分や民族、生まれた時代などが反映されているのかな~と思う。
儒教思想が強い時代(殷周)は、左優位の思想から貴族の衣服の合わせが左前だったようだ。単なる作画ミスではない…はず。(韓国も作画に関わっているのでそっちの影響の可能性もあるが)

・上天庭(じょうてんてい)と中天庭(ちゅうてんてい):この世界の神は元々は人。上天庭の神官は、天劫(天から与えられた罰や災い)を経験しそれを乗り越え飛昇した者で、主人公の謝憐はこれにあたる。中天庭の神官は、上天庭の神官から点将(指名され天界へ飛昇)した者で、謝憐の元部下である風信や慕情などは元々謝憐に点将された神官。
じゃあ下天庭は?… それは原作を読んで欲しい。

・功徳(くどく):この世界では、信徒がお参りであげる線香やお供え物のことを功徳と呼ぶ。つまり人々の信仰心が神官の持つ法力に直結している。
また、天界において貸し借りをするなど通貨のような役割も兼ねており、謝憐のように借金したり、逆にばら撒く神官もいる。

・あの鐘を落としたのはあなた

派手に飛昇したせいで鐘を落とし、とある武神の頭上に落としてしまったらしい。この後の通霊陣にも出席しているが、彼は謝憐が人間で太子だった頃の弟子で現・西南武神の慕情(ムーチン)。中天庭の神官だったが、謝憐が800年間人間界で放浪生活をしている間に飛昇し武神となった。クソデカ感情の持ち主(諸説あり)(私のお気に入り)(拗らせて)

・あの神殿を壊したのもあなた

神殿を破壊されたのは、慕情と同じく謝憐が人間で太子だった頃の弟子で現・東南武神の風信(フォンシン)。中天庭の神官だったが、謝憐が800年間人間界で放浪生活をしている間に飛昇し武神となった。ピンポイントで身内に被害を集中させている。

・通霊陣(つうれいじん):声ではなく法力で会話する場所のことで、現代のグループチャットとかリモート会議みたいなところ。エヴァのゼーレ会議みたいなものです。通霊陣に入るには各々が設定したパスワードが必要。
今回のようなグループ会議以外にも、一対一のダイレクトチャットも可能で、その場合はお互いがパスワードを交換する必要がある。

・帝君:君吾(ジュンウー)のこと。天界の神官たちをまとめあげる最高神で武神、北欧神話とかでいうオーディンみたいな人。S1には名前しか登場しないがS2から本人が登場する。

・888万の功徳返済のために:三度目の飛昇直後に大量の功徳借金を抱えた謝憐は、信徒もおらず功徳収入の見込みがない。そのため霊文が提案した策は、人間がお願いしてきた困りごとを、本来解決すべき主殿に代わり解決すること。
今回は、北方を守護する武神=明光殿の領域にて事件が発生しているらしく、人間の参拝が増えているので、多忙な明光(ミングァン)将軍に代わり解決することになった。

・前回はすぐ追放されたし私は三日に賭けるわ

オリジナル版では「前回は一炷香で落とされたじゃない、三日に賭けるわ!」というセリフ。散々な言われようである。

二度目の飛昇の際は飛昇直後に帝君(君吾)に斬りかかり殺し合いをしたため一炷香(約30分)でまた人間界へ落とされた。何があったかは小説にて。

・三界の笑い者(三界笑柄)

飛昇したにもかかわらず2度も貶謫された謝憐に対する蔑称。三界とは天界・人間界・鬼界のこと

・玄真将軍(シュエンジェンしょうぐん)慕情(ムーチン)のこと。殿下に「貴殿のお名前は?」と聞かれてショックを受けている。

南陽将軍(ナンヤンしょうぐん)風信(フォンシン)のこと。人間界で仕事してたので遅れて登場。宮殿を壊されて激おこだったが、ここで壊したのが太子殿下と知り、言葉を失う。

・法力は使えない:過去に色々あって貶謫(へんたく:人界へ堕おとすこと)された謝憐は、神でありながら法力を使うことができない。歳はとらないし死にもしないが。

・霊文殿が全力で支援します

唯一協力してくれている女性神官は霊文(リンウェン)。武神ではなく学業などを司る文神。有能だが宮殿内の書簡の山から見て取れるように非常に多忙。なんでこんなに親切なんですかね?

・天官賜福・百無禁忌

さっそくのタイトル回収。発音(tiān guān cì fú)からTGCFと略されることも多い。
本作オリジナルの用語ではなく、天官賜福は一般的には天官大帝(道教の神の一人)を指す言葉である。本作では「神官には祝福があるので、何も恐れるものはない」というような意味で使用されている。百無禁忌は対聯(ついれん=対となる句)。

・与君山(與君山)へ

通霊陣で支援を頼んだものの、武官を出してくれた神はいなかったため、謝憐一人で今回の任務地である与君山へ赴くことに。ここはさすがに旧字体だ。(※:現在中国で使用されている簡体字は1950年代に制定された文字なので古代ファンタジーで出てくるはずはない)

・銀蝶(インディエ)

「銀蝶(インディエ)」は血雨探花が操る死霊蝶の別名。挿入歌やオリジナル版OPなどの歌詞にもよく出てくるので覚えると聞き取ることができる。綺麗ですね~(棒)

・南風(ナンフォン)と扶揺(フーヤオ)

通霊陣ではあらゆる神官に支援を断られた謝憐だが、自主的に助太刀を申し出てきた神官が2名来てくれた。
右:南風(ナンフォン)=風信(神殿を壊された方)の部下。髪が黒くて声が古川慎の方。
左:扶揺(フーヤオ)=慕情(鐘を落とされた方)の部下。髪が茶色で色白。声が小林千晃の方。
仙侠物はほぼ全員長髪キャラで区別しづらいが、服装と色使いで見分けて覚えて欲しい。

南風は文字通り南からの風を意味し、扶揺は下から上に吹く暴風、つむじ風の意味、転じて出世が早いことの意味がある。ふたりとも風を意味するんですね(雑なまとめ)。扶揺については、別の中国ドラマでヒロインの名前にもなっている。
※余談だが、慕情と風信の声優は本国でも日本でもクレジットされていない。ナンデヤロナァ~…

・鬼花婿の事件:ここ百年ほどで17人の花嫁をさらっている。冒頭のシーンはどうやら17人目の被害の様子だったようだ。

・小蛍(シャオイン)と小彭(シャオポン):超絶出張ってくる少女。次の話で分かるが、彼女には与君山に人を近づけたくない理由がある。小彭は、原作では小彭頭(シャオポンのかしら)と書かれている。

・太子殿下の体術:法力が使えないが、元々は花冠武神と呼ばれる武神だった謝憐。人間だった頃から武術に長けており、色々やばいことができる。実質的に、ここには武神が三人いることに。ヤバイヨ…(語彙力)

・そろばんと銀錠

茶店を壊した費用を計算している店主が使っているのは中国式の算盤で、五玉が2つ、一玉が5つある。これは、中世まで中国は一斤(約600g)=16両(一両は約37.5g)=160匁とする16進法であったため一桁に15までおける方が便利だったから。玉が丸いのも特徴。
しかし、このシーンでは左から二番目の玉(高い桁数)からはじいているが、どういう計算をしているんだろうか・・・。
左の革袋から覗いているのは当時の通貨である銀錠(ぎんじょう)。日本では馬蹄銀と呼ばれるもので20世紀初頭まで使用されていた。かなりの大金を支払っているシーン。

・明光廟がない?:北方にある与君山は明光将軍の領域なので、本来なら明光将軍を祀った明光廟があるはずだが、そんなものはないという。その代わり、南東を守護する南陽将軍を祀った南陽殿(風信の主殿)ならあるという。

鎧をまとい弓を持つ、厳しい表情の神像は南陽将軍。似てない。

・俱陽将軍(ジューヤンしょうぐん)

ム…扶揺が南陽将軍のエピソードを殿下に言いふらす場面。

南陽将軍は元々俱陽将軍と呼ばれていたが、とある国主が廟を建てた際、字を間違えて巨陽殿(ジューヤン)と書いてしまった。※巨陽=巨根のこと。(俱と巨は発音が同じ)国主に字が違うと指摘できず、そのまま建立。そのため、女性から子宝の神としても祈祷されるようになってしまった。後に、さらに「南陽」と改められた。謝憐は人間界にいたためそんな事件があったことを知らなかった。
※アニメでは検閲対策のため「巨」ではなく「臣」と書かれているうえ、説明がないため分かりづらい。難儀な国だな…
更に余談だが、風信(南陽将軍)は女性が苦手であり、女性の参拝客が増えて非常に迷惑している。

・床でも掃いとけ(掃地)

南風をからかった扶揺が、仕返しに「床を掃け(掃地)」と言われキレる場面。
※玄真将軍(慕情)は元々は謝憐(太子殿下)の弟子であり、その昔は掃除などの身の回りの雑用を担当していた。このため、天界で「掃地将軍」と蔑まれることもあり、本人も気にしている。
主を捨てた南陽将軍(風信)と玄真将軍(慕情)のことを互いに罵り合っているが、そうなった経緯についてはぜひ現作で。慕情が先に謝憐のもとを離れたので、南風が若干マウントを取っている。二人とも太子殿下と久々に一緒だからはしゃいでいるように見えるのは自分だけ?

・食べないで!(南風)汚いでしょ!(扶揺):(=太子殿下が汚れたご飯を食べるのは解釈違いなのでやめてください)…ってこと?
・裴(ペイ)将軍:北方を司る明光将軍のこと。本名は裴茗(ペイミン)

・等級:この世界の鬼は強さ順に、「绝・凶・厉(れい)・悪」の四等級に分けられる。鬼花婿は上から二番目の「凶」らしい。

・じゃがいも警察出動

玉米(トウモロコシ)!?!?※トウモロコシは15世紀にアメリカ大陸から持ち帰って広がりました。

・侍女が二人足りないな:オリジナル版では「两个陪嫁丫鬟(双髷の侍女が二人)」と髪型の指定付き。双髷は中華娘がよくやってるドーナツ2つ付いたような髷のアレで、若い娘の髪型である。

・歌声(中国語歌詞)

新嫁娘 新嫁娘 紅花轎上新嫁娘(嫁入り娘、嫁入り娘、花轎に乗ってくる嫁入り娘)
淚汪汪 過山崗 蓋頭下莫把笑揚(目を潤ませ 丘を越える 面紗の裏で笑うなかれ)
※蓋頭(がいとう)とは頭に被る布のことで、特に花嫁が被る紅いものを「紅蓋頭」という。中国古代の結婚式では新婚夫婦が初夜を過ごす部屋に入るまで、花嫁は顔を隠さなければならなかった。(理由については諸説あるので割愛)

・鄙奴(ひど):元は人間の異形で、鬼の等級としては一番下の「悪」ですらない。が、群れで現れるため厄介。

・聞きなれた笛の音:MDZS(魔道祖師)から来たオタクたちからすると聞きなれた笛の音。「夷陵老祖が操ってるなこれ」「魔道祖師との夢のコラボじゃん」と視聴者のわきどころになる。

・何事にも例外はある:普段は太子殿下の腕に巻かれている包帯状の白い布(白綾)は、若邪(ルオイエ)と呼ばれる武器で、法力がなくても使え、自らの意思を持つ。際限なく伸びる。その経緯は殿下の壮絶な過去に由来する。アニメでは描写が省かれているが、どうやら南風は心当たりがあるようだ。

・中原の国、仙楽:中原とは古代中華文化の発祥地である黄河下流域にある平原のこと。ここから南方へと中華文化が広がっていったとされている。見て分かるように、非常に華やかで優雅、豊かな国だった。

・2分くらいで分かる太子の過去(語り手:血雨探花)

昔々、仙楽国のすごい徳の高い王子が子供を助けたり強い鬼を倒したりして飛昇しました(1回目)
→仙楽国が災難にあった際に元王子として看過できず、神をやめて人として降りたものの結局国は救えませんでした。この時に風信と慕情が従者から離脱。
→反省したとみせかけて飛昇(2回目)、帝君(君吾)を滅多刺しにして速攻(30分)で再び下界へ落とされる
→以降約800年、名を変え場所を変え人の世を生きる。流石にもう大人しくなったやろ…ということで三度目の飛昇(イマココ)

 

・第二話「山锁明光(隠された明光廟)」

・鬼花婿が敷いた陣

紅い服の人(血雨探花)が踏み潰した頭蓋骨は、鬼花婿が敷いた陣の楔だった。陣を破るにはそれを敷いた鬼花婿と同等かそれ以上の強さが必要ということになる。

・旅のお方:吹替では日本の時代劇のような言い回しがちょいちょいあるが、オリジナル版では謝憐は公子(ゴンズー)=若様、若旦那と呼ばれることが多い。

・女装大佬:=女装のボス。従者二人連れているから高貴な身分である。

・青鬼(チーグイ):青鬼と呼ばれる鬼は、绝に近い等級、つまり「凶」の鬼で、木に死体をぶら下げ血の雨を降らせるのが好き。

・「ならば行け」:自分から天界に報告へ行くといったのに太子殿下に「行け」と言われてたじろぐ扶揺。ここに留まって面倒事に巻き込まれたくないという思いを太子殿下に見透かされ、ちょっときまりが悪いのかな。

・名探偵謝憐:謝憐が推理を始めるとビリビリでコナン等の引用コメントが多用される。

・黒い霧:中華アニメによく出てくる。

・恨み:恨(ハン)は、中国の五情(喜怒哀楽怨)の怨みに相当する。

 

・第三話「旧恨红颜(女将軍の執着)」

・花嫁達が人を襲うシーンも例の笛のBGM。やはり夷陵老祖か……(違)

・「大道芸人時代の癖が抜けない」:謝憐は人間界でがらくたを拾ったりする他、大道芸人として生計をたてていた時期があり、その頃の癖が抜けないようだ。

・宣姫(シュエンジー:元は雨師国(うーしーこく)の女武将。須黎国(しゅれいこく)の武将であった裴茗(ペイミン)に戦で負け、捕虜となった。

・二人の裴将軍:裴茗の部下、裴宿(ペイシュウ)CV増田俊樹。裴茗の傍系の子孫であり、点将された中天庭の神官。小裴(シャオペイ)将軍とも。

裴宿は、裴茗に点将される以前、人間界で殺戮(オリジナル版では屠城=虐殺)を行っていたという。

・応援を連れてきた扶揺:血雨探花に対応するため、そして吊られた死体を片付けるための応援を連れてきた扶揺。玄真将軍の配下は、玄真将軍と同じように黒い衣をまとっている。

・人面疫(じんめんえき)

「仙」と書かれた旗を掲げた国が滅びるイメージから分かるように、太子殿下の国(仙楽国)を滅ぼした原因の一つ。800年前に既に根絶された疫病のはずだが、包帯の少年の顔にはその痕跡がある。どのような病なのか、彼は何者なのか、今の段階では分からない。

仙楽国に滅亡を齎した人面疫と、そして仮面をつけた白衣の人物。急に情報量が増加。

 

鬼花婿を巡る与君山の話は、謝憐達の活躍もあり、これで一段落。日本ではファンタジー「最初の村はチュートリアル(なので大筋に関係ない)」という先入観があるが、魔道祖師など他作品を読んだ方なら分かると思うがこの作者は全然そんなことないです。宣姫や名前のない包帯の少年も覚えておいたほうがいい。