下郡中のログ庫

下郡(しもごおり)と中(あたる)のログ保管庫

◆青い光/メルセデス

 ガルグ=マクで出会った級友はみんな、私より年下だった。いちばん離れている子では7つ、いちばん近い子でも私より2つ下。親友のアンをはじめ、もう少年少女と呼ぶには相応しくなくて、けれどまだ大人にはなりきれていなくて。彼女たちを見る度に、私の心はふわふわと温かくなった。幸せのかたちだ、と思う。

 もちろん、皆が皆、幸福の中にいるわけではないと知っている。それぞれに事情を抱えていて、苦悩していて……逃れようと、あるいは立ち向かおうと懸命に藻掻いている。求めても満たされなくて。あるいは、手に入れた力に振り回されて。遠くを見ては足元に躓いて。けれど、その苦悩の健全さに私は微笑んでしまうのだ。

 私が少女でいられた時間は随分と短くて、短すぎるのに凄絶な光を放っていた。これから先、ずっと続いていく私の長い、長い人生の中の春を一身に浴びながらその時を謳歌するような、うつくしい時間。いずれ誰もが、必ず喪失する青き日々。この一年だけでもいい、彼女たちがそれを存分に堪能して、そうして、大人としての一歩を踏み出す日をここで見送ることができますように。

 けれど世界はずっと残酷だった。戦争だから、と彼女たちは迷いなく、あるいは迷いながらも剣を取った。私も、同じように。自分の身を守る為ならば人は奮い立つことができることを知っている。そしてそれ以上に……誰かを守る為ならば、人は、刃を目の前の相手に突き立てることができてしまうことを、知っている。

 エミール。私の、たった一人の弟。
 私の青い光はあなたと共に在った。いつだって私は、私よりずっと、うんと、少年でいられる時間が短かったあの子のことを考えずには居れないのだ。失ってしまった光と、私はいつか、再び巡り合うことができるだろうか。